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2006年12月21日

上原ひろみ~アジアツアー2006を体験する。

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上原ひろみ「spiral」

オスカー・ピーターソンのオープニングアクトを聴いてから、久しぶりに出会えた、元気な上原ひろみ。
その間、関西では、なんばHatchでも昨年ライブをしているが、それはいけず。コンサートが兵庫県立芸術文化ホールであるというのも魅力だった。このホールは、贅沢に木を使用してあり、ホールに入ると木の香りがする。けれど、2000人のキャパでソールドアウト。ジャズ界では異例の存在である。

彼女の3枚のアルバムを聴くと、曲作りの変化というのか、編曲の変化が特に3枚目で聴いて取れる。
初めて、彼女を見たときは、おもしろいくらい指が動くので、それだけで盛り上がったりしたけれど、今回のアクトは、休憩10分をはさみ、正味2時間40分の充実したものだった。もちろん、指はまわるまわる・・・けれど、それだけじゃない。非常に小さい音から始める曲も多く、だんだんにトリオのリズム変化、アドリブ部分の転回が、いくつかあり、大きなうねりをもって、テーマに舞い戻る。そのダイナミックな運びは、デビュー作のころよりも成熟を感じる。

速い速いパッセージを叩き込んだり、連打をしたりするの聴いていて、一体1秒でどれくらいたたいているか数えてみた。というも、調律師というのは、振動数のずれを聞いて調律しているので、そのずれを1秒間に7つとか、10回とか数える習慣が身についているからなのだ。グランドピアノでは、ピアニストは1秒間で14回連打できるらしいが、彼女は、大体10回から12回当たりを連打していたと思う。

大概彼女は、足をそろえて、始めは演奏する。シフトペダル(弱音)を踏むためにそういう感じなのかなと思ったりするけれど、リズムが激しくなると立ち上がって、足を振り回す。そう元気な演奏だ。
フリージャズの山下洋輔も、拳骨で、鍵盤をたたき、ひじウチをするのは有名だが、洋輔は、それで弦を切ってしまうのだけれど、ひろみちゃんのも激しいがなんだか、許せてしまう。ピアノ弦をじかにはじいたり、弦を手で押さえてしまったり、ピアノには荒っぽいことだけれど、彼女ならば許してしまう。

本当に元気な演奏。でも元気だけではない、色っぽさも感じるな。私は、「ラブ アンド ラフター」が大好き。ブルースフィーリングがたっぷりで、3枚目のアルバムのお気に入りだ。この曲はアンコールの1曲目で演奏された。最後は「リターン・オブ・カンフー・ワールド・チャンピオン」これは、アグレッシブでファンキーで盛り上がる曲。

コンサート途中、ソロで1曲弾いてくれた。
コンサート当日、お葬式だったお茶畑のおばあちゃんのことを思って作った曲。「グリンティー ファーム」
さぞ辛い気持ちだったのだろう。けれど、ツアーのどこにでもおばあちゃんはついてきてくれる。と彼女が言うように、元気で楽しくピアノが弾けるように、おばあちゃんは世界のどこにでもついて来て見守ってくれるだろう。

いい音を聞けて、幸せな時間だった。
お客さんの年齢層もかなり広く、子供から、杖や、カートなどを押したおじいちゃん・おばあちゃんまで。それを見ていても、この人の魅力は果てしない。この先どんな風になっていくのか・・・ライブは追いかけ続けなくてはならないだろう。ジャズは、変化する。その変化をこの先も見てみたい人だ。
ピアノと格闘するのではなく、彼女はじゃれあっている。そうそう、ピアノのフレームの上におかれた、可愛い真っ赤な「Nord lead」もね。あのシンセも大切なおもちゃだ。あんなに楽しそうにピアノを弾く人はそうはいないだろうと思う。


投稿者 pianocraft : 2006年12月21日 21:48

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コメント

わたしもその場にいるような臨場感あふれるお話です。熱が入っていますね。それにしても音楽っていいですね。最近ことばが少なくていいかなと思い「ゴスペル」というDVDをみました。今のゴスペルというのは,「黒人霊歌」というイメージとは違うものなんですね。元気なピアノの演奏いいですねぇ。わたしも音の響きをからだで感じたいなぁとおもいます。

投稿者 KATEK : 2006年12月22日 17:38

こんばんは。コンサートは楽しいですね。ゴスペルのDVDをご覧になったのですか。ゴスペルと言っても、スピリチャルと言われる、いわゆる黒人霊歌も歌いますが、最近のは、ハーモニーが難しい(現代的な)コンテンポラリーと言われるもが、日本でも多く歌われています。色んな音楽に私も、救われたり、元気づけられています。年末のばたばたが終わったら、年越しは音楽漬けで、いきたいですね。

コンサートに行かれる方もいますが、おうちでも、静かに聴いたり、元気よく聴いたりしたいです。

投稿者 pianocrft : 2006年12月22日 22:02

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