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2005年12月23日
亀も空を飛ぶ
京都シネマまで、出かけてやっと、やっと観た。
すぐには、書けなかった。「亀も空を飛ぶ」でググルとたっぷりの感想がかかれている。
登場するのは主にクルド人の子供達。大人は彼らの引き立て役くらいのウエートでしか登場しない。
イラク戦争の戦時下で子供達はこんな風に生きている。
サテライト・・・戦争孤児をとりまとめ、年寄りしかいない村で便利屋として重宝されている。快活な少年。
パショー・・・片足に障害のあり、いつも松葉杖をついている少年。サテライトのよき友。
シルクー・・・泣き虫だけれど、愛嬌のあるサテライトを慕っている弟分のような少年。
ヘンゴウ・・・クルド人虐殺のために両親を失った少年。両腕を地雷の被害で無くしている。
アグリン・・・ヘンゴウの妹で、イラク兵にレイプされて生んだ2歳くらいの子供を育てている。寂しい目をして一時たりとも笑わなかった。
この子供達の日常は、地主に頼まれた「地雷掘り」これを仲買人に売ってわずかなお金をもらって生活している。この地雷は、仲買人から国連事務所に売りわたされ、本当はリサイクルされて、また地雷に生まれ変わる。哀しいリサイクル。大人はむごい。地雷除去のためのグループは狂言回しか?一日1000ドルの給料で除去する。子供達はたったの5ドル程度。子供の命の値段で決めているつもりか?
この子達の生活は、実にたくましく「大人」になることを強いられたている。そうせざるを得ないから。
だが、冒頭からアグリンが崖から飛び降りるシーンというのに衝撃を受ける。
彼女の哀しさもサテライトのアメリカびいきも、イラク戦争終結を示すラストシーンで米兵が戦車とともに通り過ぎる映像が、実は侵略者「サダム」が「アメリカ」に変わっただけだという事実を私たちは知っている。
映画はフィクションであるけれど、その続きは現実に繋がっている。
出演者の子供達も素人。彼らの現実の生活も、続いているのだ。
衛星放送をみようとアンテナをたてて情報をしりたがる大人たち。
リバーベンドの日記にもたびたび衛星放送のことは出ていた。アメリカの番組を見ているのだ。
けれど、子供達はそんなことに関係なく、戦時下を生きざるを得ない。
いつも子供が死に近いところにいる。そこでも日本でも。
罪なのは、やはり。大人側だ。
戦争・暴力大好きな大人になっている人はいませんか?
投稿者 pianocraft : 2005年12月23日 23:34
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» 酔っぱらった馬の時間 from シンガプラ的日々
気温が30度を超すかというシンガの日曜日、昼前。
洗濯物を洗濯機にぶちこんだワタクシは、ずいぶん前に購入したイラン映画「酔っぱらった馬の時間」を鑑賞。
... [続きを読む]
トラックバック時刻: 2006年11月19日 23:58
コメント
観に行かれたのですね。私も大阪で終了するまでにぜひもう一度と思っておりましたが叶いませんでした。
アグリを死なせたくなかった、です。生きていけるすべはあったろうに・・・。
崖から飛ぶシーンは悲しすぎるけれど、描かれていない悲劇はいたるところにある、のでしょうね。
TBありがとうございました。
投稿者 hana : 2005年12月24日 14:49
hanaさんコメントありがとうございました。
アグリンは、大人の助けも得られずに。というか一人の大人の女性のように、望まず出来た我が子を許せず、自分も許せなかった。
hanaさんの言うように別の道がわたしたちの国では用意されているけれど、ひよっとしたらイスラム圏では、そういった女性の生きるすべは用意されていないかもしれない・・・と思うのです。
ヘンゴウのようにやさしいまなざしで幼子を愛する事ができるのか・・大人達は。とも思いました。
投稿者 pianocraft : 2005年12月24日 21:45
pianocraftさん、仰る通りかもしれません。
だけど許せない(罪ある)のはアグリン自身やその子ではないことを誰か大人が説いてやりたいです。生きることに手を貸してやりたいです。
どんなに悲惨な目にあっても、人は変わっていく力があることも信じています。
それにしても、いつまでも心に残る映画です。
投稿者 hana : 2005年12月25日 13:25
hanaさん。そうですね。
優しい目で、せめて私たちのまなざしは暖かく、子供達に向けていきたい。
投稿者 pianocraft : 2005年12月26日 22:49
管理人様、こんにちは。
今日、DVDで「亀も空を飛ぶ」と同じ監督が制作した「酔っぱらった馬の時間」を観ました。
扱っているテーマから言うと、「酔っぱらった・・」の方がまだ重くないような気がしますが、こちらでも充分に重く、感じるところの多い作品でした。
この監督に非常に興味を持ったため、検索していてこのブログにたどり着きました。
映画の感想ですが、非常に興味深く読まさせて頂きました。
そして、「亀も・・」も、思わず日本のアマゾンで買ってしまいました。
私ですが、シンガポール在住なのに・・!!
この作品は、観てしまうと当分いろいろ考えてしまいそうなので、覚悟してみないといけないな、なんて思ってしまいました。
投稿者 Mee : 2006年11月20日 00:05
meeさん。初めまして。シンガポールでお住まいの様子、ブログで拝見させていただきました。「亀空」これをご覧になったら、私のブログのLINKSにあるJIM-NETのサイトものぞいてみてくださいね。
実際に、イラクの子供たちを支援しているところです。映画を観ていても、現実をみているような「ドキュメンタリー」のような気持ちになります。
私も「酔っ払った馬の時間」を観たくなりました。「亀空」は重いテーマを持っていますが、子供たちはたくましく、生き生きとしています。是非、感想も知らせてくださいね。
投稿者 pianocrft : 2006年11月20日 22:53
コメントとトラックバックをありがとうございました。
JIM-NETのサイトは数回覗いたことがある、という程度でした。
またゆっくり観てみます。
多くのイラン映画がそうだと思うのですが、出演しているのが俳優ではなくて、実際に現地に住んでいる人で、ストーリーも虚構の物ではあるけれども、実際にそういう事が起こっているので半分ドキュメンタリーを観ているような気持ちになってしまいます。
この映画に登場した人たちは、今どういう生活をしているのだろう、ってずっと考え込ませてしまう手法には驚きです。
イギリスのマイケル・ウィンターボトム監督による"in this world"という映画も観ましたが、同じような手法で作られていて、イラン映画の影響かな、と思いました。
http://blog.goo.ne.jp/nanhai/e/d95078c7316ed26506e154a4d653c19b
「亀も・・」はまず実家に送りましたので、何時手元に届くかは解りませんが、じっくり観たいと思います。
本日あたり届いていると思いますので、両親にまず観てもらって感想を聞こうと思っています。
投稿者 Mee : 2006年11月21日 12:11