コレラ・貧困・飢餓
先日、2つの新書を読んだ。
1つは「アフリカ・レポート」松本仁一 著/岩波新書、もう1つは「アメリカの貧困」堤美果 著/岩波新書
そして、聞こえてくるジンバブエのコレラ流行のニュース。患者は一万人を超え、死者も560人を超えた。
ジンバブエは、極度のインフレでもTVで紹介されたり、独裁政治をとりあげられたりしている。「アフリカ・レポート」でも書かれているが、南アフリカに命がけで越境してくる人も多く、今回のコレラの流行も社会整備を二の次、三の次にして為政者が自分や自分の所属する部族の私服を肥やすことばかりしていたことで、人々の命はとても危険にさらされている。
独立した1980年時は、農業立国として、アフリカでは自立できる見込みがあったのに、ムガペは、国を崩壊させてしまった。アフリカの貧困問題は、為政者の問題が根深い。政治のリーダーよりも、部族のつながりを大切にする。では、部族間で、アフリカをよくするように手をつなぐことはできないのだろうか?
しかし、コレラの蔓延が、心配だ。
人々を貧困や飢餓の苦しみに追い込み、憎悪が渦巻いているからこそ、紛争も奪い合いも収まるところを知らない。その上に、伝染病が悪魔のように襲いかかってきた。国は立ち直ることができるのだろうか?
アフリカの人々がそれぞれの国の似たような状況で苦しんでいるかと思えば、対極にあるような先進国「アメリカ」でも、深刻な貧困が潜行している。
まさにサブプライム問題で、日本もあおりを食ってしまって他人事ではない深刻な状況だが、ちょうど「アメリカの貧困」を読んで、問題のあったサブプライムが破綻するタイミングとなった。
アメリカの医療がとても酷いものであることなど、具体的な例があげられていて驚いた。
人々が貧困ラインに転落する大きな原因が医療費の問題であるということ。日本の健康保険の制度が不十分で、問題があったとしても雲泥の差である。民間の保険会社に入っていても、支払われ無い場合も多く、出産は経費をおさえるため日帰りという。入院すると4000ドル~8000ドル掛かると、子供も生むことができない。医者にかからないために、みな必死でサプリメントを飲んで予防する。
けれど、サプリメントに頼ったって、良くはないわな。違う病気にかかったり。
その貧困は、サブプライムのように、自由主義経済のターゲットにされるばかりでなく、戦争ビジネスの大切な担い手ともなっていく。いまや、イラクで働く戦場ビジネスの人々は国籍も様々らしいが、米軍より劣悪な条件で働き、劣化ウランに被爆して帰国しても何の保証もなく、さらに医療によって貧困を加速させていかざるを得ない。
もっと酷いのは、軍のリクルーターがあの手、この手で貧困な家庭の子供を狙うことだ。
学費を援助するなどといって、実際はいろんな条件があって現実は、割を食うのは子供たちで、酷いPTSDに苦しめられ、人生をとんでもない方向へ捻じ曲げられてしまうこともある。帰還兵に、ホームレスが多いことは、以前も書いた。
貧困が憎悪を生み、暴力に変わるとき。
それを利用する経済の化け物がいるということは、アメリカだけの問題ではない。
日本も似たような状況だ。貧困の再生産。救いようのない状況がまた、さらに憎悪を生む。
ぐるぐる回る。
すごく、無力を感じる。