トンマッコルへようこそ~暖かいけど反戦
映画「トンマッコルへようこそ」を知ったのは、新聞での映画宣伝だった。韓国映画でファンタジー映画であり、ストーリーを軽く書いてあるのを読むと、朝鮮戦争のときに偶然村に迷い込んだ、韓国軍・北朝鮮人民軍・連合軍の奇妙な確執と連帯への道が描かれているらしい・・・。その情報を知った上で、TVコマーシャルが始まったら、魅力をとても感じた。宮崎駿の世界観とも重なる美しい村の風景、平和しかしらない村人。
この映画は、観てみるとファンタジーだけでない、芯のある反戦メッセージがちりばめられている。
もちろん、ストーリーに「なんでやねん!」とつっこみをいれたいところは各所あるけれど、そんなことはどうでもよくなるような、美しく、切なく、残酷な映画だった。コメディなところもうんとあり、大笑いさせてくれるのだけれど、よくできた作品で人の心の揺さぶりをかける映画だった。
詳しいストーリーは公式サイト www.youkoso-movie.jpや、yahooの特集サイト http://event.movies.yahoo.co.jp/theater/youkoso/index.htmlを見てもらえればわかる。
トンマッコルの人々は戦争そのものを知らない。そんな設定はありえないのかもしれないが、迷い込んできた兵士の鉄兜を「洗面器をかぶった人がやってきたよ。」と歓迎し、迷い込んだ南と北の兵士がにらみ合いをする中、村人が集められ人質のように銃をむけられているにも関わらず、トイレに行くからとか、夜が明けて蜂の巣を見に行かないと心配だからとかいう、日常的な理由でやすやすと緊張している空気をぶっ飛ばして日常生活に帰っていく。
拍子抜けする兵士たち、なぜ、戦わなければならないか?という理由そのものがこの村に来て消失する。兵士は戦いによって、それぞれに心に傷をもっている。敵ではなく同志の命を救えなかったこと、病むを得ず、難民を殺したこと・・国のために戦っているとはいえ、本当にまもるべきものは何なのか、戦争は人を守らないことを十分に知っている。この映画は、ずしんとくる。こんなに笑ったのに・・・。
これは、今、日本の政治家が軍隊を持つ国に導こうとする意図に反する気持ちに痛烈に重なる。
多くの人にトンマッコルを見て欲しい。無防備で無垢な村、トンマッコル。
この映画は、とても反米的な描き方をしている。これは、韓国軍が米軍と連帯していることに対する批判としても受け取れる。人と人は、本当は境界線をもっていない、けれど文化がそうさせると、昨日のTV番組でどこかの先生が言ってた。
映像も本当に美しい。宮崎アニメを実写にしたらこんな風なのかなと思うような幻想的な美しさだ。
音楽も久石譲。